仕事を指示する側にとって、その指示内容というのは、受ける人のレベルによって異なります。新入社員の頃ですと、一定の手順を覚えていれば出来る仕事を指示して、いわゆる作業量をこなしてくれることを期待します。少し仕事に慣れてきた社員に対しては、事前の調整は指示側で済ませておき、仕事の手順も大まかに決めて、それに基づいた指示をします。そして、指示した手順で解決できない場合は指示側でフォローします。更に、中堅レベルの社員になると、目的をはっきりさせることだけで、大体の仕事をこなしてくれるようになります。
ここまでなら、指示する側は少なからずある程度の準備が必要になるのですが、指示する方も多忙で手がまわらなかったり、あるいは、指示する側が他部署から異動したばかりでその業務に詳しくない時は、全くの準備無しで指示をせざるを得ない場合があります。そういった際の指示は例えば次のようになります。「先日、新システムを導入したお客様のA社が、ログインのプロセスのみを元に戻したいと言っているらしい」もし、上司からこういう指示を受けた場合、中堅レベル社員以下であれば、新システムのログインプロセスを元に戻したシステムを作成して、上司に渡すことでしょう。ところが、実際はそうではないかもしれません。例えば・・・。
自社の営業マンが、A社のシステム導入担当者に新システム導入後のフォローに行ったところ、「新システムでは、これまでなかった毎月一回ログイン時にパスワードの変更を要求するようになりました。わが社の社員は、そういうのに慣れていないので少し混乱しているようです。どうしたものでしょうか。」と言われました。それを営業マンが営業部長に報告したところ、営業部長が開発部長であるあなたの上司に「A社が新システムのログインプロセスが気に入っていないようだ」と伝えました。それを聞いた開発部長が、あなたに「A社が、ログインのプロセスのみを元に戻したい」と伝えました。先ほどの話ですね。
ところが、実はA社のシステム導入担当者は、上司から「セキュリティの観点から定期的なパスワードの変更は必須である。これは変えない。でも、社員は面倒くさがって文句を言っている。どうしよう?例えば、パスワードを変更しないことで問題になった例などを社員に示したら良いかな?」と言われていました。そして、そういった例というのは、あなたの会社の営業パンフレットに記載されているので、それをA社の社員に配布すれば済んだかもしれません。
つまり、仕事の指示や目的が不明な場合は、まずそれをはっきりさせることが重要です。それを明確にするには、その問題が発生しているところまで遡らないとならないことがほとんどです。仕事に慣れた上司だと、あなたが知らない間にそういったことは全て明確にしてくれています。でも、そうでない場合は、あなた自らが仕事の目的を明確にしていかねばなりません。ここまで出来るようになると、あなたは、どのような仕事の指示でも受けられるようになるでしょう。