電気製品、電子製品、自動車などなど、複雑な機能を多く持つ機器には、分厚い取扱説明書がつきものでした。場合によっては、100ページを軽く超えて、単行本に近くなる勢いがありました。例えば、ただテレビを見たいだけなのに、どれだけ取扱説明書を読んで勉強しないといけないのか?と辟易とした思いを持ってしまいます。ところが、最近は少し異変が起きてきました。これまで取扱説明書が普通に同梱されていた電気製品であっても、簡単な数枚の導入マニュアルだけになったり、あるいは、全く無くなったりしてきたのです。今回は、これについて考察します。
まず、前提としてあるのがインターネットの普及です。多くの方がインターネットにつながる時代になってきたので、いつでもネットで取扱説明書をメーカーからユーザーに供給できるようになりました。これにより、製品に取扱説明書を同梱しなくてもよい環境が整いました。
メーカーにとって、取扱説明書を製品に同梱するのは大きな負担になります。製品出荷時に取扱説明書を完成しておかねばなりませんが、製品の機能が多機能複雑になってきましたので、全てをミスなく書き切るには時間がかかります。製品のライフサイクルが短くなって、早く製品を世の中に送り出すためには、取扱説明書がボトルネックになることもあります。また、製品の出荷国が日本だけではなく世界に送りだされる場合には、翻訳の必要性があります。翻訳を正確に行うというのは時間がかかります。しかし、インターネットで英語で掲載しておけば、ほとんどの言語には自動翻訳で翻訳することができ、ユーザーが自己責任で読むことが出来ます。このことも、メーカーの負荷を下げています。更には、最近の製品の多くは、インターネットに接続され、自身に内蔵されているソフトウエアを自動更新します。自動更新されるということは、中身が変わるということですから、製品出荷時には取扱説明書に書ききるのが原理的に出来ないということになります。
また、ユーザーにとって取扱説明書が無いというのは、悪いことばかりではありません。物流費が下がるために製品コストを下げることが出来ますし、自身が購入してから持ち帰る時も軽くて小さくなります。ゴミとして処分する際も手間がかかりません。
このような観点から、多機能複雑、最先端技術、グローバル供給、ソフトウエア、インターネット接続といったキーワードを多く含む電気製品は、今後は取扱説明書が同梱されない時代になってくると思われます。本記事を読んでいらっしゃる皆さまは問題ないと思いますが、高齢者の方などでインターネットが苦手な方には、周りの方のフォローが必要かもしれません。