上司の悩みの一つに、部下に方針が伝わらない、というのがあるようです。今回の記事は、このことについて考えます。
方針というのは、1年、あるいは、それ以上の期間において、活動の基本となる考え方です。具体的な施策ではありません。例えば、スマートフォンのSNSアプリ開発において、「ユーザが使いやすいインターフェースを優先する」「バグを出さない開発」といったものが方針となります。これに対して、具体的な開発項目、開発スケジュールなどは、方針ではなくて、活動項目、活動目標、などになります。
部下に方針が伝わらない理由の先ず一つとして、そもそも、方針がわからない場合があります。「未来を開くアプリ」のような方針を立てたとしても、何が未来を開くのかがわからないので、部下としてはたちどころに止まってしまうでしょう。方針は、メンバーがそれを基本として活動するものですが、漠然としていて活動に結びつかなかったり、言っていることのイメージがわかなければ、意味がありません。方針というのは、部下が活動の基本となるところまでブレイクダウンされている必要があります。
次にある理由として、共感できない方針というのがあります。お客様から求められているのが、使いやすいアプリであるのに、斬新なアプリを求めるような方針であれば、メンバーはやる気がなくなってしまうでしょう。また、方針が毎年変わる、ひどい時は真逆になってしまうなどのようなことがあれば、毎年多くのことをやりなおさないとならないかもしれません。あるいは、開発メンバーが得意な分野とは違う分野の開発を急に求められてしまっても、やる気が出ないでしょう。このように、メンバーから共感できない方針であれば、それは行動に移ることはありません。
別の理由として、実行できない方針というのもあります。iPhoneアプリに加えてAndroidアプリを同時開発する、という方針を立てられたとしても、必要な人員を投入されないのでは現実的には不可能でしょう。また、iPhoneとは異なるAndroid特有の開発項目を明らかにして、それに対応する具体的施策を立てられないのであれば、絵に描いた餅になってしまいます。方針というのは、やりたいことを単に書けばよいというものではありません。現場レベルで実行可能性があるものでないと、意味が無いのです。ですから、方針を出す前に現場のことをよく理解して、関係者やキーマンの意見を聞いて立案する、そういった準備が必要になります。
出された方針を見ると、それがどれだけ事前によく考えられたか否かというのは、見る人によってはすぐに分かります。例えば、方針を説明しないといけないから急遽考えました、というのも見ていると分かります。そんな方針、だれも相手にしないですよね。