パワハラ/パワーハラスメントをよく確認する⑤

前回に引き続き、昨今よく耳にするパワハラ/パワーハラスメントについて、その内容を確認していきます。主には、上司としての目線で考えていきます。今回が最後になります。

〇法的責任

パワハラが、刑法の規定に触れたり被害者に損害が生じた場合には、刑法で処罰されたり民法で損害を賠償したり慰謝料を支払う義務が出てきます。今の日本ではパワーハラスメント罪というのはありませんけれども、その代わりに刑法や民法で処罰や義務を負わねばならないことを覚えておきましょう。こうなると、パワハラというのも他の事件とそう変わらないことになります。
昔は、法は家庭に入らずということで、家庭内での問題での処罰は軽減されることが多くありました。しかしながら、社会的にDVの問題などもあり、きっちりと処罰や義務を負わされるケースが増えてきているようです。職場というのも、昔から日本では家庭的にとらえる傾向があり、また職場でトラブルを発生させると辞めざるを得なくなるケースもあり、収入も考えて、弱い立場の部下としてはなかなか問題を表沙汰にすることはありませんでしが。
しかし、最近は違います。若い人は、子供のころから比較的整備された環境で育ってき、理不尽なしくみが少ない中で生きてきました。そのような中、就職してからも当然そういうことを期待していますから、理不尽なことがあれば黙らずに表立って処理しようとすることが多いです。また、SNSの発達により、自分の身の回りに起こったことを即座に同級生や知人と共有して、意見やアドバイスを求めます。そこで、皆で理不尽だという意見になれば、ネットで色々と調べて、法的な対応も含めて自分にとってベストな方法を考えて実行していくでしょう。
また、法的な責任は、上司個人にも会社に対しても追及されることになります。大きな会社にお勤めであれば、大々的にメディアで取り上げられることもありますから、会社としてのダメージも大きくなってしまいます。そうなると、会社に経営的に大きな損失を与えてしまうことになり、場合によっては、会社から上司個人への損害の請求も考えられます。会社も同僚も部下も、仕事上の関係が無くなれば赤の他人です。そのように考えれば、赤の他人と接しているように注意深く配慮していくことが必要なのでしょう。

以上、5回にわたって、パワハラ/パワーハラスメントについて確認してきました。今回書いたのは、一般の会社の職場を例にとって記載しました。実際には、多くの会社、多くの業界、多くの商習慣がありますので、一概に判断することはできません。しかしながら、その職場でこれまで問題にならなかったからといって、今後は大丈夫であるとは限りません。過去は閉鎖的な職場で起きたことも、いまはネットによってすぐに世界中に発信されることもあり得ます。これを機会に、もう一度、自分の職場を確認してはいかがでしょう。