前回に引き続き、昨今よく耳にするパワハラ/パワーハラスメントについて、その内容を確認していきます。主には、上司としての目線で考えていきます。
〇程度の低いことを命じる過小な要求
運転手なのに草むしりだけやらせる、事務職なのに倉庫業務だけをやらせる、といった要求を言います。前項目の過大な要求とは逆のパターンになります。これにも、上司として実務的には注意すべきことが幾つかあります。
まず、草むしりや倉庫業務にもかかわらず、程度の低い業務はどこにでもあります。例え、優秀な研究者ばかり集めていても、職場の掃除、電話対応、宴会の設定など、研究から見れば程度の低い業務というのは、存在します。これを、程度の低い業務だから誰にもやらせられないということは無いでしょう。要は、そういった業務を、他の業務は与えずにそればかりやらせる、特定の人にばかり極端に多くやらせるというのが問題になるのでしょう。もちろん、職場の宴会などは、通常は若い人がやるというところも多いでしょう。過去から伝統的にそういうことをやっていた、若い人が大変な時には周りがそれを手伝うといったことがあれば、パワハラとされる可能性も低くなるでしょう。このようなことを鑑みながら、仕事の全体のバランスを見ながら、上司は仕事を振っていく必要があります。
また、特定の人に、俗にいう雑用ばかり回ってしまう傾向というのもあります。業務において、他の人ほどに活躍できなかったり、気が弱くて言われたことを断りにくいという方もいらっしゃるでしょう。そういう方に、どうしても程度の低い仕事ばかり回ってしまうというのは、上司としては注意していかねばなりません。これは、どちらかというと、そういう仕事ばかり回る人に注意するというよりは、周りにそういうことが特定の人に集中しないような雰囲気作りが大切です。
パワハラのつもりが無いのに結果的にそのようになってしまう、こういうことが無いように職場のバランスをとる必要があります。
〇私的な領域への侵害
交際相手のことをしつこく聞く、交際相手と会おうとすると業務を言いつける、などがこれにあたります。最近の若い人は、仕事とプライベートを切り分けたがる傾向があるので、なおさらこういうことには注意したほうが良いでしょう。私的な領域の侵害といえば、直接プライベートな人間関係に踏み込んだり、プライベートな生活に影響を与えることをイメージしがちですが、必ずしもそれだけではありません。プライベートなことをしつこく聞き出そうとしたり、そこに影響を与えるような言動についても注意が必要です。
仕事とプライベートの区別というのは本当に難しい話で、生活の大半を共に職場で過ごしている仲間ですから、プライベートについてもサポートしたくなるというのが上司としてもあります。ですから、プライベートのことを聞き出すのも、他なる興味だけではなくて相手をきっちりとサポートする意思があること、そういう意思があっても相手が嫌がっていないことなどを確認しながら行う必要があります。単に、パワハラにつながる可能性があるということで一切そういうことには口出ししない、というのはちょっと違うように思います。
次回に続きます。