前回の記事の続きです。
〇私たちの変化による煩雑への対応
一方、機械や建物と違い、私たちの身体は常に変化をしています。今ある細胞を壊して、食物から新しい細胞を作って置き換えます。常に、身体のあちらこちらで破壊と創造を繰り返していることになります。これは、必ずしも良いことばかりではないでしょう。ウィルスを取り入れることもありますし、癌細胞を増殖させることもあります。身体全体が複雑なしくみで動いており、そのバランスが崩れるとあっという間に死に至ることもあります。風邪をこじらせて場合によっては亡くなってしまうような脆さは、機械や建物にはありません、物理的な衝突をしたとしても、機械や建物より私たちの方が弱いでしょう。ですが、私たちは怪我をしても、多少のことであれば自然に治癒してしまいます。機械や建物が、受けた傷はその後は自ら勝手に治ることがないというのとは違います。
また、パソコンやスマートフォンは、数年も経てば新しいシステム環境のでは使うことができずに、捨てられてしまうことが往々にしてあります。一方、私たちは、環境が変わっても自分たちが勉強することによって、順応していくことが出来ます。環境の変化に自ら対応していくことが出来る、それが私たちがエントロピーの法則の煩雑への対応に対して導き出した答えであるのでしょう。
変化をしている状態は不安定であって失敗も多くあります。それであっても、それをとることで環境の変化に対応することを選択したのが私たちであるといえます。
〇近くの細胞による機能補完
私たちの細胞は、ある機能を持つ細胞を失ったとしても、他の細胞がその機能をカバーすることがあるそうです。私たちの身体の中が、破壊と創造を繰り返しているからこそ、何か身体の中で不具合が起こってしまったとしても、それを補完するような破壊と創造が行われて、失った機能を別の細胞がカバーするような働きがおこるということです。これは、普通の機械では、なかなかそういうわけにはいきません。パソコンやスマートフォンでは、一つの部品が壊れたり一つの配線が切れてしまうと、その部品や配線を必要とする機能は働かなくなります。
福岡伸一さんは動的平衡と呼ばれていますが、私たちの身体の中では目指す状態を保つように全体がバランスをとるように動いているようです。これは、中央の脳が全てをコントロールしているわけでもなく、部分部分でもバランスをとるように動いているということで、身体中のあちらこちらで変化に対応して破壊と創造を繰り返していることになります。寝ても覚めても、常に変化対応しようと私たちの全身が動いているというのは、感動的なしくみに感じます。
次回に続きます。