前回に続き、中国やアメリカで普及してきている「信用スコア」についての記事です。信用スコアについての考察を幾つかの観点に基づいて行っていきます。今回が最後となります。
・民間管理か行政管理か
これまで信用スコアについて議論してきましたが、危険な面だけではなくメリットも沢山あります。また、社会的なインフラになる可能性もあります。社会的なインフラになってしまった場合は、これまでのように民間管理で良いのか、はたまた行政管理にしたほうが良いのかという問題も起こってくるでしょう。これは、現在のネット社会においても、例えばビッグデータや検索エンジンなどは世界共通の公的な財産になりつつあり、これが民間管理のままで良いのかという議論になっていることと似ています。
社会的なインフラになった場合、これが民間管理のままだと、不公平感が出てきたり、セキュリティの面で心配が出てきます。民間管理の基本は営利目的であり、営利に反するものに投資されにくいからです。このような意味では、行政管理の方が良いでしょう。一方、行政管理になると、安全第一で運営されてしまうため、新しい技術の導入や新しいビジネスモデルの導入は、どうしても遅くなってしまう傾向にあります。進歩が鈍化してしまうわけです。また、これまで利益を得るために努力をしてきた人々を、どのように評価して報いるのかということも考えねばなりません。
こう考えると、技術が成熟するとともに行政管理に移行するための諸問題が解決するまでは、民間管理の方が良いのではと思います。そして、準備万端で行政管理に移行すればと考えます。このあたりは専門家の方たちの議論を経て決めていった方が良いでしょう。
・企業や個人に便利な点もある
これまで、信用スコアについて色々な観点から考察してきました。新しいモノ、個人の生活への影響が大きいものとして、日本人らしく警戒気味に記事を書いてきましたが、もちろん企業や個人にとってメリットも沢山あります。
信用スコアが高い方は色々なメリットが受けられるわけですし、信用スコアが精度良く機能すれば企業や個人の取引や社会生活を安心して行える可能性もあります。また、これによって新しいビジネスが発生して、新しい雇用を生む可能性もあります。個人の信用度をビッグデータをもって数値化を行うということは、これまであまり行われていませんでしたから、その活用方法についてはまだまだ見つけられていないところが多いと考えられます。ですから、デメリットばかりを心配するのではなく、新しいメリットも期待して判断することが世界の発展につながることになるでしょう。
以上で、今回の信用スコアに関する記事シリーズをいったん終わります。引き続き、この行方を見守っていきたいと思います。