前回に続き、中国やアメリカで普及してきている「信用スコア」についての記事です。信用スコアについての考察を幾つかの観点に基づいて行っていきます。
・信用スコアをベースとした社会になるか
現時点の日本では、信用スコアが必ずしも日常生活で必要とされることは少ないかもしれません。ですが、高齢化社会で働き手が少なく経済の鈍化が懸念されている日本においては、海外出身の働き手のニーズも言われています。また、観光立国を目指している日本には、多くの国の方が訪問されることでしょう。そうなると、様々な人との取り器や関係において、信用スコアを日本でも積極的に活用しようとする人が出てくるかもしれません。
また、日本人同士であっても、見えぬ者同士がネットで色々なやり取りをする場合にも活用される可能性があります。現時点では、個人同士のやり取りにおいてはネット企業が仲介に入るしくみになっており、それで安全性が担保されている場合がありますが、信用スコアがネット社会で確立されてくると違った形態が出来るかもしれません。
信用スコアをベースとしたビジネスモデルやコミュニティが形成され、それが人々に魅力あるものになってくると、人々は信用スコアに情報を提供して数値化されようとも、そこに参加したくなる、あるいは参加せざるを得なくなってきます。そうなってくると信用スコアも一気に普及する可能性が高くなります。
・高得点詐欺
信用スコアは、多くの個人情報で構成されています。収入が多い、支払いが遅延なく行われている、取引においてルール違反を犯さないなどが考えられますが、今後はさらにビッグデータを用いて多くの情報が使われ、分析され、数値化されることになるでしょう。
ところで、信用スコアはAIなどを用いて数値化がされていくと思われますが、その数値化アルゴリズムを分析し、逆に実力以上に信用スコアを上げようとする者も現れてくるでしょう。現在でも、検索エンジンによる検索結果を上げようとする者も沢山居ます。この類です。
信用スコアを上げるためのテクニックが売られたり、実際に信用スコアを上げることを代行する者が出てくる可能性があります。このような高得点詐欺が、信用スコアの導入当初には現れてくるでしょう。もちろん、AIを用いているわけですから、このような詐欺は時間とともに淘汰されていくと思いますが、導入初期は注意が必要だと考えられます。
・個人攻撃
先の項目の高得点詐欺とは逆に、ある個人を攻撃して信用スコアを下げようとする者が現れる可能性もあります。恨み、いじめ、ライバル落としなどが動機として起こる可能性があります。信用というのは、上げるのは難しく下がるのは簡単だという特性を持っていますから、高得点詐欺よりも個人攻撃の方が質が悪いと言えましょう。罪もなく真面目に生活していても、心無い人の行動によって、人生を左右されかねないことになるかもしれません。しかも、その情報や信用スコアは、永遠に残る可能性があるのです。このことは、信用スコアの活用において、慎重に取り扱わなければならないでしょう。
次回に続きます。