これまで複数回に渡り、事業部別組織と職能別組織とについて、それぞれのメリット・デメリットを論じてきました。今回は、これまでの検討結果をまとめていきたいと思いますが、その前に、事業部別組織と職能別組織をまとめた組織であるマトリックス組織について考えてみます。
・マトリックス組織
マトリックス組織とは、事業部別組織と職能別組織を縦・横の関係にかけ合わせて、複数の指揮命令系統の下で社員を動かそうとするものです。例えば、ある社員は、電気製品事業部に属しているが、なおかつ法務部にも属しているといった形態です。縦方向の組織を事業部別組織、横方向の組織を職能別組織とした場合に、その交点のどこかに社員が属している、つまりは、社員はどこかの事業部とどこかの職能に属しているといった形態です。
つまり、事業部別組織と職能別組織がうまくバランスできるように、各社員が常に両方に属しているというわけです。
ですが、多くの方がお感じになるように、これはとてもややこしい組織形態です。各社員は2つの組織に属しているわけですから、上司が2人いることになります。レポートラインは2つありますし、業務指示も2つから来るのでそのバランスをとることが困難になります。また、2人の上司の方針が違えば、その間に挟まれて調整に苦労することになります。
また、上司もその運営に苦労することになります。もう一方の上司の指示に気を遣いながら部下に指示を出さねばなりません。なかなか思い切った指示を出すことも難しいですし、組織運営を行うにあたっては微妙なハンドリングが求められるわけです。
このように、マトリックス組織は運営が非常に難しいため、思い付きでスタートしても成功することは難しいでしょう。細かいルール、例えば、人事権は誰が持つのか、業績評価は誰が行うのか、といったことから、毎週のミーティングは何曜日の何時にするのか、といったことまでを決めないと、日常の運営すらままならないことになりかねません。
・まとめ
以上、これまで、事業部別組織と職能別組織について考えてきました。大きく分類すると、事業部別組織はビジネスを行うための組織であり、職能別組織は個別専門性を高めた集団です。現実の企業では、どちらか一方に偏るわけではなく、組織によって使い分けていることが多いのではないかと思います。例えば、企画、開発、製造、販売などのビジネスの中核となる職能は事業部別組織に、法務、人事などの専門性が要求される職能は職能別組織にすることが多いと思います。どの組織をどのように構成するかは、ビジネスの種類やその会社のカラーにもよると思います。いずれにせよ、組織は会社のパフォーマンスを大きく左右しますので、よく考えて構成すべきものです。