前回に引き続き、事業部別組織と職能別組織のメリットとデメリットを検討していきます。項目は、順不同です。
・スピード
仕事のスピードという意味では、事業部別組織と職能別組織のどちらの方が早いでしょうか。ここでは、意思決定の早さや環境変化への対応速度などではなく、実務レベルで仕事のスピードはどちらが早いかということを考えます。
実務の仕事のスピードというのは、上位の方針が徹底されているか、そして、実務能力が高いか、ということに依存します。
事業部別組織では、このうちの上位の方針が徹底されているということについてメリットがあります。色々な人が仕事に携わっていく中で、上位の方針が徹底されていることはとても重要です。例えば、自動車を設計するとした場合、高級感を出すのか、スポーツ感を出すのか、お得感を出すのか、一体どれなのかという方針が徹底されていなければ、皆がバラバラな方向に向かってしまいます。ハンドルは高級タイプ、オーディオはスポーツタイプ、みたいなちぐはぐな自動車を設計してしまいます。そして、皆で集まって、統一するには一体どうしたら良いのかを喧々諤々話し合うのです。これでは、とても時間がかかってしまいます。その点、事業部別組織では、事業部長が方針を決めれば皆がそれに従いますから、仕事のスピードが早くなります。
一方、職能別組織では、方針の徹底については事業部別組織には劣るものの、いざ業務が実務レベルに落ちてしまいますと、仕事のスピードは早いです。というのも、もともと専門性が高いことに加え、効率化などを図ることに長けているからです。
このように、仕事のスピードという意味では、事業部別組織と職能別組織のそれぞれで得意分野が違うということになります。
・専門性と一般性
仕事における専門性と一般性と言う意味ではいかがでしょうか。これは、普通に考えると、職能別組織が専門性が高く、事業部別組織が一般性が高いということになろうかと思います。元々、それらを狙ったそれぞれの組織であるからです。
ところが、必ずしもそうではない面もあります。例えば、職能別組織を極めようとすると、社外の同職能のことを調べたり、社外の同職能と交流を持つことが多くなります。そうなると自社以外のことを知ることができるので、一般性が上がっていくことになります。
事業部別組織は、一般性が高いですが、それは自社で担当している製品やサービス全般についての幅広い知識や能力が増えるということです。ただ、言い換えると、その製品やサービスの業界事情には詳しくなりますが、それ以外の製品やサービスの業界については疎くなります。つまり、事業部別組織だからと言って、専門性が低いとか一般性が高いとは必ずしも言えないということです。
次回に続きます。