事業部別組織と職能別組織(製品別/地域別組織と機能別組織)⑤

前回に引き続き、事業部別組織と職能別組織のメリットとデメリットを検討していきます。項目は、順不同です。

・予算

予算をコスト意識高く策定し、そして実際に最小の出費で抑えるのは、事業部別組織と職能別組織のどちらの方が向いているでしょうか。
事業部別組織では、事業を成立させるために予算を組みます。そのためには、製品やサービスを販売して、それに見合う対価をお客様からもらう訳ですから、お客様からもらう対価が、予算を越えていれば話になりません。また、年の初めに高い予算を組んでいても、売り上げ量が落ちたり売価が安くなってくると黒字にすることができませんので、当然、出費を抑えることになります。つまり、事業部別組織では、ビジネスの基本とも言えますが、収入と支出を常に意識して、収入>支出となるように組織全体が動くことが出来ます。
ところが、職能別組織では、そういう訳にも行きません。設計部門や製造部門は、コストをかけて良い製品を作ろうとします。営業部門は、ビジネスを取って売り上げを少しでも上げることが目的になるので、場合によっては製品を安くしてでも売ろうとします。つまり、部署間の意思が統一されずにいると(統一することはしばしば難しい)、高いコストで作った製品やサービスを安い値段で売るといったことが起こってしまうのです。また、各部署で予算が余ったとしても、それを来年以降のために投資するなどして、使ってしまうことがほとんどです。このように、職能別組織では、予算をコスト意識高く策定し、そして実際に最小の出費で抑えるということには余り向いていません。

・利益

これも、予算と同様で、利益を得る意識を高く持てるのは事業部別組織であり、職能別組織では難しくなります。利益というのは、製品やサービスを企画、開発、製造、販売するというトータルのコストに対して、お客様から得られた対価との差から生まれるものです。利益を増やすためには、各部署の状況を良く見て、この組織には力を入れる、この組織には力を入れない、など経営資源をバランスよく割り振って、もっとも事業が効率的に経営されるように調整することが必要です。こういったことができるのは、事業部長がトータル判断できる事業部別組織です。
職能別組織にあるのは、年の初めに策定された各組織の予算計画と毎月の実行状況であり、この差が少ないことが優秀な組織となります。実績を予算よりも抑えることは当然ですが、極端に実績が低くなってしまうと、その組織の管理能力が問われることになります。販売が増えようが減ろうが、企画部門や開発部門の予算にあまり手をつけられないことがしばしば見受けられます。

次回に続きます。

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