前回の記事で、組織には、大きく分けて、事業部別組織と職能別組織の2つのタイプがあることを書きました。今回からは、色々な項目ごとに、それぞれ2つの組織のメリットとデメリットを検討していきます。項目は、順不同です。
・方針・目標
事業部別組織と職能別組織、会社の方針や目標はどちらの方が浸透し果たす確率が高くなるのでしょうか? 結論から言うと、事業部別組織の方が職能別組織よりも果たす確率は高いでしょう。
企業は、主にお客様に商品やサービスを提供し、その対価をもらうことで利益を得ます。つまり、お客様にきっちりと向かい、その要望を聞くことが重要になります。事業部別組織は、事業に必要な機能がそこに全て含まれています。従って、事業部長がお客様の要望を聞き、それを達成するために必要なことを部下を動かして実現することが可能になります。また、商品企画のフェーズが終わり、開発や製造のフェーズになると、商品企画のメンバーの工数を開発や製造に移すなどのリソースシフトも、事業部長の判断で可能です。
会社の方針や目標を実現するには色々な方法やアプローチがあります。商品やサービスをお客様に提供するにあたり、その方法やアプローチが人によって違うのであれば、まともな商品やサービスは完成できません。よって、一人の事業部長が、方針や目標を実現するアプローチを示してそれを皆にやらせる、これがとても大切なのです。
一方、職能別組織はどうでしょうか。職能別組織では、商品企画のプロ、開発のプロ、製造のプロなど、数多くのプロを揃えていますので、全ての職能組織の方向性が一致すれば、とてもレベルの高い製品やサービスを供給することができます。しかしながら、それぞれの組織がやりたい方向や、それぞれの組織が力を入れたい製品やサービスを一致させることは至難の業です。また、組織間のリソース再配分もなかなか難しくなります。そういった観点から、職能別組織はポテンシャルは高いものの、方針や目標を浸透し果たす確率は下がります。このように、方針や目標を実現するアプローチを統一するというのはとても大切なのです。
・お客様志向
お客様に向いて仕事が出来るのは、事業部別組織でしょうか、職能別組織でしょうか。これは、事業部別組織の方に軍配が上がります。事業部別組織では、事業部長の一存でお客様の意思を組織内に浸透することも可能ですし、部下の誰でもお客様のところに出向かせることも可能です。何より、お金をくれるのはお客様ですから、その意識は強くなります。
一方、職能別組織では、お客様に向かうのは営業部門の仕事です。営業のプロがお客様の考えを良く聞いて、それを関連部門に伝えるわけです。もちろん、営業のプロですからお客様の考えを良く聞くことが出来ます。しかし、それを社内に持ち帰ったところで、そこから関連の組織を説得するという作業が残ります。ここで、関連の組織を説得できないと社内のプロ集団を良い方向に活用することが出来ません。プロ集団というのは、自分の職能を極めることに夢中ですから、彼らを説得するのはなかなか骨の折れる作業です。これらのことから、お客様志向は、事業部別組織の方が向いているのです。
次回に続きます。