5年くらいまでの世界の経済はグローバル化を突き進めていました。インターネットにより世界中の情報が集まるようになり、それによって色々な業種で世界最適なものを作ることが出来るようになり、世界の誰もがそれを享受できるようになりました。例えば、アップルは世界中の技術から良いものを集め、iPhoneを製造し、それを世界中に供給しています。また、投資家たちは、世界中で最も利益があがるであろう投資先を探し出し、こぞってそこに投資しようとします。これらのことは、世界経済がグローバルで動いているということですが、逆に言うと、どこか1つが止まれば世界中が止まる危険性に満ちています。例えば、電子機器などで言うと、半導体やシステムなどのキーテクノロジーの多くはアメリカが支配しており、ローテク部品や製造の多くは中国で行われています。そのため、アメリカと中国の仲が悪くなって、互いに貿易や交流を止めてしまうと、たちどころに多くの電子機器が製造できなくなります。これは、消費者に電子機器が供給されないだけではなく、関連する多くの企業が倒産して経済的に大ダメージが世界に起こることになります。このようなことが、電子機器だけではなく、あらゆる業種で行われています。
世界中が平和で自由であれば問題は起こらないのかもしれませんが、テロが起こったり戦争が起こったりすると、このようにグローバル化された世界経済はもろくも崩れ去る恐れがあります。もちろん、このことは多くの人たちは理解しているので、昔と違って、今は簡単に貿易や交流を止めることは無くなりました。止めること自体が、本人を含めて多くの人の不利益になってしまうからです。ですが、これは、各国や各企業にとっては、不安な事項です。そうなると、グローバル化からローカル化に向かうという動きも場合によっては起こる可能性があります。他国やリスクがある地域に頼ることなく、ローカルでモノづくりや金融などのシステムを作り上げ、他者への依存度を下げて安心を得るという方針です。我々の死活問題に即座に直結する食料については、食料自給率というものがあります。これを一定以上にしておかないと、有事の際にいきなり飢えてしまうからです。このようなリスクが、食料以外にも多くのところにあるというのが今の世界ではないでしょうか。
世の中には管理限界というものがあります。世界中で多くの物や事が繋がっているのがいまの社会ですが、それは、管理されているのではなく、うまく行くように皆が注意深く互いに運営しているように思えます。これは、先に述べた危険をはらんでいます。各国や地域の管理限界を自覚し、ローカル化をする範囲とグローバル化をする範囲、こういうことを検討して進めていく時代が来るような予感がしています。