前回から引き続き、政府が「明日の日本を支える観光ビジョン構想会議」にて平成28年3月30日に決定した観光ビジョンについて、目についた項目、気になった項目についてチェックしています。なお、ピックアップする項目は順不同です。
〇「地方創生回廊」の完備
新幹線、高速道路などの高速交通網を活用し、地方にも観光客を流入させる作戦です。産業が都市部に集中する中、せっかく整備した交通網を活用するチャンスです。交通網も観光立国における立派な資源ということが言えます。
〇地方空港のゲートウェイ機能強化とLCC就航促進
首都圏空港の容量ひっ迫と訪日外国人の85%が特定の空港に集中するということで、これを緩和するために地方空港の利用率を上げようとするものです。本項目については、国が中心となってするものかと思いましたが、コンセッション方式が検討されるとのことです。コンセッション方式とは、公共施設の運営権を国や地方自治体などから与えられ、民間企業が公共インフラの運営を行うことです。国や地方自治体は運営権を売却することにより対価を得ることができますし、民間企業のノウハウを得ることが出来ます。社会のしくみが複雑になりビジネススピードも早くなっていますから、この時代に合った方式かもしれません。
〇クルーズ船受入の更なる拡充
訪日クルーズ船の旅客数は、2013年から2015年で約6倍になっています。日本は四方が海に囲まれているため、港の数が多くて地方にも沢山あるため地方再生にも効くように思います。ただ、クルーズ船の旅客のもてなし方というのはあまりノウハウが無いように思いますし、ビジネスへの大きなつながり方もあまり知られていないようにも思いますので、どのように具体化されていくかが注目されます。
〇公共交通利用環境の革新
新幹線や高速バスなど、一部を除いて海外からの予約が困難であること、また、都市交通などは路線が複雑で乗り換えや切符の購入も難しくて情報も不足しています。また、バス路線に至っては全容が検索しても分からないことが多くなっています。これらの多くは我々日本人にとっても同じ状況ですから、訪日観光客にとっては尚更でしょう。特に、都市交通は、数多くの路線が複雑に入り交じっており、どこで切符を買ってどこで乗り換えれば良いのかさえ日本人でもわかりにくくなっています。海外の他の主要都市で、ここまで複雑な都市交通網になっているのはあまり例がないのではないでしょうか。便利な手段が多すぎてかえって不便になっているようです。また、バス路線については、どの地方においても検索が難しいというのは私も感じます。バスは世界的にもメジャーな公共交通機関ですので、これらも便利にしていくということは訪日観光客があちこちに足を伸ばせて、ビジネス拡大につながるチャンスが広がることが期待できます。
次回に続きます。