前回は、政府が「明日の日本を支える観光ビジョン構想会議」を開催したことを紹介しました。今回は、平成28年3月30日にその会議で決定された観光ビジョンをチェックしていきます。なお、ピックアップする項目は順不同です。
〇概要
まず、全体の概要を見てみます。
日本は、四方を海に囲まれていること、国土も起伏に富んでいることから、豊富な自然に恵まれています。そして、四方を海に囲まれていることなどから、大国との交流を行いつつも、大陸とは異なる独自の文化を形成してきました。また、縦に長い国土を有しているために、冬に雪が降る北海道から南国に近い沖縄まで多種多様な気候を有しています。更には、これらにも起因して独自の豊富な食文化も有しています。これらの、自然・文化・気候・食という観光に必要な4つの条件を備えた貴重な国であり、これらの豊富な観光資源を真に開花させることで、裾野の広い観光を実現することが可能と考えています。
確かに、戦後しばらくにおいても、日本は敗戦の余韻があるのかもしれませんが、排他的なところ、あるいは自信のないところがあるのか、自国を外国人に観光してもらうおうという雰囲気は少なかったと思います。英語を含めた外国語を使える人が少なかったこともありますし、外国への旅行を経験した人もしばらくは少なかったので、逆に外国人を迎えるということはどういうことかが分からなかったのかもしれません。また、欧米からは遠かったために、欧米からの旅行者も少なく、また、アジア圏はまだまだ裕福ではなかっためにそこからの旅行者も少なかったのでしょう。
ところが、日本人の多くが海外旅行に行くようになりました。高校や場合によっては中学校でも、行事として海外に行くケースもあります。また、アジア圏も裕福になり、そこからの日本への旅行者も増えてきました。このような理由から、日本が観光立国をめざせる素地ができてきました。
また、日本では労働力の減少、地方から都市部への人口の流入などが起こり、地方での産業が成立しにくい状況になっています。このようななか、各地方おいて自然・文化・気候・食という観光資源を持っているのであれば、それぞれが観光産業を発展させることが出来る可能性を大きく秘めています。外国人の観光ニーズも多様ですから、どの地方にもチャンスはあります。
このような状況から日本が観光立国を目指すというのは理にかなっていると思います。また、2011年から2015年の5年間で、訪日外国人旅行者数は3倍以上、訪日外国人旅行消費額は4倍以上、地方部での外国人述べ宿泊数も4倍以上になっています。一方、日本人国内旅行消費額は、ほとんど変化がありません。人口が増えていないこと、海外旅行が増えていることから、これは当然かもしれません。このような数値も、日本が観光立国を目指すバックグランドの一つになっているのでしょう。今後の日本の経済発展を望む私たちも、よく頭に入れておく必要があります。
次回に続きます。