最近の日本では、外国人観光客が目立つようになってきました。以前より、外国人の労働者や学生はよく目にしていたのですが、数名から10名前後のバックパックやキャリーバッグを持った観光客を多く見かけます。東京や京都や大阪といった都市部は勿論ですが、それ以外のローカル列車などでも結構見かけます。また、公共交通機関などでも、各駅それぞれに英数字の記号がついたり、主要駅では外国人用のインフォーメーションが設置されたり、行先案内板が多国語になったりと、インフラも整備されているようです。かなりの勢いで日本が変化していると感じたので、政府の力の入れ方も相当であると感じ、どのような施策を進めようとしているのかをチェックすることにしました。
まず、施策の前に注目すべきことは、国土交通省の中に観光庁が設立されていることです。平成20年10月1日に国土交通省の外局として設立されました。外局は、日本政府の内閣府または省に置かれる特殊な事務、独立性の強い事務を行う組織です。主な外局は、公正取引委員会、金融庁、消費者庁、国税庁などがあり、それと並ぶ重要性が認められているということになります。観光立国を目指すには、官民の多くのステークホルダーと協業・調整しながら具体的に施策を推進していく必要がありますから、独立性が強くて各省庁とある時は対等の立場で発言できることが必要です。そのような意味から、外局になったのでしょう。
また、発足当時に、「従来の枠にとらわれない、いわゆる役所らしくない役所になるべき」などの期待が寄せられていたということで、観光庁も「開かれた官公庁」をビジョンとして、ステークホルダーとの交流をしながらスピード感もったアクションを行うなどの行動憲章を制定しています。外局として設立された意義とリンクした活動でしょう。
さて、実際の政策として、政府は、「明日の日本を支える観光ビジョン構想会議」を本会議、ワーキンググループ、そしてタスクフォースなど30回ほど実施し、平成28年3月30日に[明日の日本を支える観光ビジョン構想会議](議長:内閣総理大臣)において、新たな観光ビジョンを策定しました。社会が複雑化し、多くの官民が複雑に入り組む観光政策においては、議長を内閣総理大臣としてビジョンを制定し、それを錦の御旗として観光庁がリードしていくやり方は現実的であると思います。そうしないと、観光庁だけで動いても他の誰も動かなくなる危険性があります。いまや企業だけではなく、政府においても、国全体においてもそのような構造になってしまっているのでしょう。
次回に続きます。