人間がやる作業を代わりにロボットがやる。これは、ひと昔前に工場で流行したことです。自動車工場のラインなどで、大きなアーム型のロボットが自動車を溶接したり組み立てたり塗装したりする姿がテレビなどで映されていました。費用が高く労働時間に制限がある人間とは異なり、ルーチン作業に強く24時間働くことが可能ということで、色々な工場が導入をしました。なお、ロボットは大量生産で威力を発揮するものであり、現在のような少量多品種生産の時代では、人間が働く場面もまた増えてきたのではと思います。いずれにせよ、ロボットは、人間の身体作業を代わりに行うものでした。
さて、モノづくりなどの身体作業とは異なり、事務作業などのホワイトカラーが机上で行う頭脳業務の自動化は長らく行われてきませんでした。人間の頭脳の代わりを行うロボットは、夢のまた夢と思われてきました。コンピューター、またはパソコンが現れ始めた時代においても、それらは頭脳ではなく、文書作成、表計算、メール通信などの、頭脳作業を補助するための道具に過ぎませんでした。ノート、鉛筆、電卓、手紙を使ったそれぞれの作業の延長線上の扱いです。
ところが、多くの個々の事務作業がパソコンとインターネットで行われるようになってから、状況が変わってきます。殆んどの事務作業がパソコンで行われ、インターネットを介してパソコンでやり取りされ、スマートフォンやタブレットで配信されるようになってきました。そうなると、経営的な意思決定を伴わない、決まった判定基準に基づいて行われるパソコン上の作業は、人手を介さなくても出来るようになります。
例えば、(1)毎月決まったフォーマットで調査会社から送られてくる定型データを、(2)社内の定型書式の報告書に書き写して、(3)社内の責任者に一斉に発信する、といった一連の作業を考えてみましょう。これまででしたら、(1)事務員が電子メールで受け取った定型データを調査データフォルダーに保管し、(2)その定型データをエクセルで読み込んでグラフ化して報告書ファイルに貼り付け、(3)出来上がった報告書ファイルをメールに添付して、あて先を責任者にして一斉メール配信する、といった作業を行うことでしょう。この一連の作業には経営的な意思決定は入っていません。メールを受け取る・フォルダに入れる・グラフ化して報告書に入れる・メールに添付して送る。といった複数の単純作業の集まりです。
これまで、このような作業は、電子メールでデータを受信するのはoutlook、データをフォルダに保存するのはエクスプローラー、データからグラフを作るのはエクセル、グラフを報告書にするのはワード、報告書を送るのはoutlookといったように、個々の作業はそれぞれが行うものの、それらを関連付けて繋ぐ作業として人手が必要でした。
次回に続きます。