出身部署に対する思い

会社員をしていると、異動はつきものです。一生同じ部署で仕事をするのは稀です。人材の活性化、ビジネス環境の変化などの理由から、殆んどの方が異動を経験することになるでしょう。

若いうちの異動というのは、仕事の全体像も見えていませんし、責任をもって腹をくくって仕事をしているわけでもありませんから、出身部署に対しては「仕事における思い出」という形で印象に残ることが多くなります。こんなことがあったな、こんなことを言われたな、あの場面はうまく行ったな、なとといったような感じです。

ところが、責任者としてやっていた部署、自分がリードしていた出身部署はそうはなりません。様々な課題や困難な場面に遭遇し、どうしたら良いかを悩み、難しい判断を繰り返し、良い思い出が少なく辛いことばかりになりがちです。それでも、周りに協力をお願いしながら責任をもって腹をくくって仕事をしてきたので「仕事における思い入れ」が強く印象に残ります。異動してからも、あれで良かったのか、間違っていなかったのか、ということを悩んだりするものです。

ましてや、自分が作った部署というのは更に「思い入れ」が強くなります。自分がやるべきと思ったことをするために部署を作り、金をかけ、人を集め、一から仕事を作り上げてきたのですから当然です。特に、人を集めてきたことに関しては、その人の人生にかなりの影響を与えたことになりますから、責任の重さも変わってきます。

このように、責任者をやっていた部署や自分が作った部署というのは、どうしても思い入れが強くなるため、異動してからも気になります。特に、異動先が隣の部署や近い部署であると、出身部署の仕事の状態が見えてしまいますので、色々な思いを寄せてしまいます。新しい責任者の考え方が不十分であったり、担当者のやり方が甘くなったように見えがちです。そういった理由から、出身部署に対しては厳しい見方をしたり批判的な発言をし勝ちです。

ですが、よく考えてみましょう。あなたが責任者として強い意思をもって長い間仕事をしてきたのであれば、新しい責任者が一朝一夕でそのレベルに到達することは出来ないでしょう。仕事を覚え、関連部署や取引先との人間関係を構築し、担当者の能力や業務量を把握して、課題解決にあたる、そのようなことはすぐには出来ません。また、担当者にしても、新しい責任者の方針の下で仕事を行うべきですから、その方針が固まるまでは、新しい責任者をサポートしたり、必要な情報を上げて仕事を覚えてもらわないといけませんから、必然的にパフォーマンスはある程度落ちてしまいます。

ですから、異動された元責任者の方は、出身部署に対しては最初はかなり甘めに評価すべきであると考えています。半年から一年の間くらいは様子をみたり、あるいは陰ながらサポートしてあげ、仕事を軌道に乗せてあげる配慮が必要ではないでしょうか。