主要作品の多くが映画化・ドラマ化されているため、一般に知られていることが多い山崎豊子の作品の一つであり、本作品も、既に映画化・ドラマ化されている。日本航空をモデルとしたフィクション社会派小説です。航空会社という大企業が舞台であり、サラリーマンとして主人公が世界中を飛び回ったり、飛行機事故という世間に大きな影響を与えバッシングを受けたり、汚職事件であったりと、1990年代後半の時代にあってはサラリーマンにとっては少し身近とは言えない遠い世界でした。しかし、昨今に至っては、多くのサラリーマンが海外出張に行くというのは普通のことになりつつあり、少しのことで企業が世間からバッシングを受ける時代となり、汚職なども身近のことが報道されるなどしており、本作品の舞台・事件は現在にあっては身近に感じれれる存在になってきたと思います。だからこそ、いま読んでみると多くの方に共感を受ける作品ではないのでしょうか。WOWOWによるテレビドラマ化が2016年であったというのも、うなづけます。
本作品は、アフリカ篇、御巣鷹山篇、会長室篇、の3部構成になっています。主人公は、国民航空に勤める恩地元です。それぞれ、一介のサラリーマンとしての会社の矛盾との争い、航空機事故という大きな惨事を起こしてしまった企業に勤める者の社会とのかかわりあい方、裏金や癒着といった企業そのものの問題や政界との黒い関係、のそれぞれが書かれています。物語そのものが、実在した日本航空の社員や日本航空の事故での取材などをもとに構成されているため、非現実的な内容ではなく、現実に十分起こりえること/現実に身近に起こっている内容となっています。特に、ノンフィクションの小説の多くが、主人公や登場人物が特殊な能力や優秀な能力を持っているが故の考え方・発想で特別な事件を起こしていることが多いのに対し、本作品では、多くの人が作っている共同体において、こういう事件が起これば人はこのように動く、この人がこのように動けば周りの人はこのように動く、企業を取り巻く環境変化や企業のニーズによって人は疎まれたり必要とされるといった、実社会の道理が正しく描かれています。
ですから、本作品は、物語を楽しむだけではなく、企業の中で生きていくものとして、企業というものはどのような考えを持ちどのように動いていくのか、その中の人々はどのような行動をするのか、そして、その中で個人はどのような待遇がされていくのかといったことを勉強するには良い作品です。ある意味、サラリーマンの教科書と呼べるかもしれません。
次回からは、作品で描かれた内容について考察します。