前回は、ジョブ・ローテーションが行われないことの問題点について書き、ジョブ・ローテーションを推奨しました。しかし、このジョブ・ローテーションにもメリットがある反面、デメリットもあります。今回は、このデメリットをどのように克服していくかを書きます。
まず、ジョブ・ローテーションにより、専門家が生まれないというデメリットがあります。これについては、各部署ごとに、どういった専門家が何人必要かをあらかじめ決めて置き、専門家とローテーションメンバーを分けて計画的に人材育成することが良いでしょう。人材育成は長期的なものです。職場ごとのビジョンを決め、必要な人材をきっちりと補充して育てていく、これが重要です。
他のデメリットとして、育成した社員が退職してしまうリスクがあります。これについては、リスクをゼロにあすることも出来ませんし、かといって育成しないと会社が破綻します。ですから、いかに退職リスクを減らすかの工夫を積み重ねることになります。まずは、ジョブ・ローテーション対象候補の人材そのものの希望、適正試験、会社で蓄積されたノウハウから総合して適材を選ぶことです。次に、ジョブ・ローテーションに入った後も定期的に面談することです。ジョブ・ローテーション中の問題や要望について必要なものは対応します。また、本人がどこかの仕事が気に入って専門家になりたいと思ったのなら、場合によってはそちらに変更した方が会社としての損失も減らすことができます。もちろん、育成する社員を甘やかしたり我儘を許す必要はありませんが、会社にとってのメリットを冷静に考えて判断しましょう。
また、ジョブ・ローテーションでは、場合によっては転勤が生じるために、社員やその家族に負担がかかってしまいます。ですから、家族構成、お子様の学年、ご両親の状況をよく把握して置き、それに配慮することも重要です。ジョブ・ローテーションするメンバー全体の状況を把握し、プライベートに配慮しながらうまく回していくことが肝要です。
このように、ジョブ・ローテーションを成功に導くには、会社として意思を決め、ジョブ・ローテーションのメンバーの考えと状況を確認し、トータルで判断しながら実践していく必要があります。そして、短期的な都合に振られずに長期視点でやりきっていかねばなりません。これには、経営者や会社主要メンバーに理解をしてもらって進めないとなりません。環境変化が激しい現在、なかなか難しいこととは思いますが、経営とは企業を存続させるものです。そのために必要なことはやりきらねばなりません。味方を増やしながら、実現に導いてください。