以前、日本の会社では計画的なジョブ・ローテーションがなされていました。ジョブ・ローテーションでは、人材を定期的に異動させることにより、色々な種類の仕事を覚えることができたり、色々な人脈を作れます。そのことにより、10年~15年経つと広い範囲を見ることが出来るマネージャーに、また実務を良く知った経営者になることができるなど、会社にとって重要な人材を作ることができます。また、そこまでではなくても、職場の活性化や標準化には有効な手段です。
しかしながら、最近は、ジョブ・ローテーションが従来に比べて少なくなっているようです。これには様々な理由が存在しています。先ずは、以前のように一度会社勤めをすると定年まで残るということが常識ではなくなり、会社を早く辞める人が増えたので、育てても無駄になることが多くなったこと。また、経営のチェックが短くなり、毎四半期ごとに成績をチェックされるようになったので、人を育てる余裕がなくなったこと。そして、同じく経営のチェックが短くなったので、成果を上げるには経験者を他に回したくないという感情が生まれるようになったことです。これらの理由により、ジョブ・ローテーションは減ってきたと思われます。
しかし、ビジネス環境がグローバル化してしまった昨今、逆にジョブ・ローテーションが少ないことは以前よりも日本の会社を窮地に追い込みます。業務範囲が広がったため、今まで日本国内中心で仕事をしているとある程度離れた部署で起こっていることも予想できましたが、グローバル化してしまうと地球の裏で何が起こっているかなどは中々わかりません。ですから、日本からコントロールしようとしても、的を得たコントロールが出来なくなります。更に、地球の裏の拠点で緊急事態が発生したり、あるいは責任者が辞めてしまった時に、日本から人を送り込もうとしても送り込める人が居なくなってしまいます。特に、日本のビジネス文化は海外とは大きく異なりますから、この点は深刻です。
更に国内であっても弊害が出てきています。人の異動が減ったために仕事の属人化が進んでしまい、更にローテーションが難しくなってしまいます。その結果、その職場では同じ人が同じ仕事ばかりしているので、全体的にモチベーションが下がっていきます。これにより、自分がいかに楽に仕事をするかに思いが偏ってしまい勝ちです。また、ひどくなれば、会社の利益を自分のものにしてしまうなど、やってはいけないことに手を出してしまうようなことになりかねません。
このように、ジョブ・ローテーションは会社では有効な手段なので定期的に実施すべきですが、先に述べたように短期的な成果が出ない以外にも、専門家が生まれない、社員のプライベートに負担がかかる場合がある、育てた社員が退職することによる損失など、デメリットもたくさんあります。そこで、これらのデメリットを最小限にしながらジョブ・ローテーションを行う必要があります。これについて、次回に述べます。