企業経営において、トップダウンやボトムアップということばが良く聞かれます。トップダウンというのは、社長や会長が行った意思決定が上位から下位に順に伝えれれ、末端の社員に従わせるやり方です。ボトムアップというのは下位から上位への発議で意思決定がなされる管理方式です。どちらの方式にも良い点があります。
トップダウン方式では、上位者が現場を熟知した上で明確な方針と具体的な指示を出すことができれば、組織のリソースが一つの目的に向かって有効に活用されるので大きなビジネスパワーを生むことが出来ます。しかし、現場を良く知らないトップが自分勝手な指示を出すと現場はついてこなくなり、逆に全然機能しない状態になります。一方、ボトムアップ方式では、現場から様々な提案が上がってくるので、トップがそれを集約して明確な方向性を打ち出せば、実態に応じた細かいビジネスが出来ます。しかしながら、現場から様々な提案が上がってきても、トップがそれを整理して明確な方向を打ち出さない限りはパワーが分散されバラバラになっていまいます。
トップダウンとボトムアップのいずれの方式でも、トップはボトムの状況を理解して明確な方針を出すこと、ボトムは方針に基づいて実務をしっかりと行っていくことが必要になります。
ところで、ビジネスのグローバル化・高速環境変化に伴い、トップダウン方式とボトムアップ方式のいずれの場合においても有効に行うことが困難になってきました。ビジネスがグローバル化することで対応する範囲が広くなり、環境変化が高速になることでビジネスもより速く柔軟に対応する必要性が出てきました。こうなると、トップが現場を十分に熟知することが難しくなって完全なトップダウンの実現が困難になってきますし、現場の意見をトップに伝えようと思ってもグローバル経営ではトップへの距離が遠くて難易度が増えてきます。
よって、ビジネスを成功させるには、トップダウン方式であっても現場の問題点を早くボトムアップでフィードバックする事が大切です。また、ボトムアップ方式では、グローバル化・高速環境変化に負けない速度と分かりやすさで現場提案をトップに上げて意思決定・方針打ち出しをしてもらうことが大切です。特に、トップダウン方式を採用している会社・組織では、経営者や組織長が過去に豊富な実務経験が有って成功しているからこそこの方式を採っています。「俺は仕事のことが分かっている。本質が分かっている」ということになりがちです。もちろん、ビジネスの本質はどのような仕事でも同じなのでそれは間違っていませんが、ビジネスの環境変化が激しい昨今は勝敗がオセロゲームのように激しく切り替わります。現場の少しの変化をとらえ、速く柔軟に対応することが生き残るには必要なのです。このような、経営者や組織者には意識改革が必要ですが、それであっても自信を持っている上位者たちに現場の考えを伝えるというのはなかなか難しいことです。
次回以降に続きます。