前回の記事で、会社を辞めたいと言ってきた部下には、その理由を教えてもらうことが大切だと書きました。そして、部下にその理由を教えてもらうために、これまで一緒に居た会社なんだから良くするために協力して欲しい、そして、今後のあなたの将来に何が良いかを一緒に考えさせてくれ、という2つの目的を挙げました。
最初の目的ですが、いまの会社を良くするということは、残された自分を含む会社にとっては大切なことですし、辞めたいと言っている部下に対しても、もし会社が改善すれば残ってくれるかもしれません。ですから、辞めたい部下からは色々と手厳しいことを言われるかもしれませんが、反論せずに素直に聞きましょう。そして、どう改善したらよいかを、自分で提案して部下に評価してもらったり、相手に考えてもらってどのようにしたら実現するかを検討しましょう。
2つ目の目的ですが、今後の部下の将来に何が良いかを一緒に考えるということは、今の会社の都合や自分の責任者としての都合を全て封印して、純粋に部下にとって何がベストになるかを考える必要があります。これをすることにより、部下が心を開くし、本当に部下が辞めたい理由が見えるようになってきます。このスタンスで行くと、例え優秀な部下で引き留めたいと思っていても、辞めて転職することが部下にとってベストであれば辞めることを後押しすることになります。しかし、私はこれで良いと思っています。自分や会社の都合で部下を引き留めたところで、それが部下にとってベストでないならば、自分も部下も後悔すると思うからです。
さて、部下が会社を辞めたい理由というのは、今の仕事に不満があることと新しい仕事に魅力があること、この2つのトータルバランスでどちらが得かを判断した結果になることが多いと思います。
まず、今の仕事に不満はないけれど、新しい仕事が自分が本当にやりたい仕事であり、例え転職に失敗してもそれでもトライしたいというのであれば、これはもう転職してもらったほうが良いと思います。本当にやりたい仕事が見つかったり、その仕事につけるチャンスは、滅多にない幸せなことだからです。
次に、今の会社に不満があり、それだったら新しい会社の方が良いと判断している場合です。この場合は、注意が必要ですし、色々なことを検討せねばなりません。というのは、今の会社の不満が新しい会社で解消されたとしても、今の会社で満足していたことが新しい会社では不十分で不満になることがあるからです。この場合、新しい会社や環境について色々なシミュレーションをする必要があります。また、人生経験豊富な方々の知見をもらいながら新しい会社で見えていないことを見えるようにする必要があります。
例えば、今の会社の上司が気に入らなくて、新しい会社で引っ張ってくれる上司を尊敬していても、新しい上司がいつまで居るか分かりません。今の会社の規模が小さいので大きい会社に転職したとしても、大きい会社では皆で分業するので、規模が大きくても業務範囲が狭いので達成感は無いかもしれません。今の会社の規模が大きすぎて自分の存在感が無いので小さい規模の会社に行ったとしても、小さい規模の会社では出来る範囲が限られているので自己実現の達成感が少ないかもしれません。
このように、今の会社が不満で辞めたい場合は、新しい会社では違う大きな不満が出る場合がありますので、ここは慎重に検討が必要です。