スタッフ部門が守らなければならないこと

以前の記事で、スタッフ部門が陥りそうな危険性について書きました。確認ですが、商社なら営業、メーカーなら技術者、ネット企業なら開発者が、会社の業務に直接かかわるライン部門/直接部門であり、それに対して、企画部門、人事部門、法務部門、経理部門などはライン部門/直接部門をサポートするスタッフ部門/間接部門です。

スタッフ部門は、専門性が高いという特徴があるためにライン部門に適切なサポートを行うサービスができる反面、実際のビジネスの状況をよく理解できていないと唯我独尊になって過剰な専門領域への対応をすることになりがちです。それを戒めたのが以前の記事でした。

このような書き方をすると、一番尊重されるべきはビジネスを行っているライン部門であり、スタッフ部門はライン部門にアドバイスをできるものの従属的な関係でしかないように捉えられるかもしれませんが、そうではありません。今回は、スタッフ部門が守るべきことを書きます。

スタッフ部門がライン部門より詳しいのはその専門領域ですが、その中でも特に、法律、政令、商習慣などは重要な専門性です。ライン部門がどのようなビジネスに環境に置かれていても、法律や政令は犯してはならないものであり、商習慣であっても尊重すべきものは尊重されねばなりません。つまり、ビジネスを行う際に、前提として犯してはならないものや尊重されるべき他のものがあるのであれば、それはライン部門の意志よりも優先されるのです。

例えば、日本には下請法(下請代金支払遅延等防止法)というものがあり、親事業者による下請事業者に対する優越的地位の濫用行為を取り締まるために制定された法律があります。例えば、下請事業者に責任がないのに、親事業者が発注後に下請代金の額を減じることは禁じられています。ライン部門が、このことを知らずに例え悪意がなく下請事業者にこのようなことを行ってしまえば、公正取引委員会から違反行為を取り止めるように勧告されたり、企業名や違反事実の概要が公表されたりもします。

このようなことになってしまえば、いくらビジネスを続けたくてもビジネスを続けられなくなったり、あるいはビジネス継続にとても不利になります。また、問題となったビジネスだけではなく、その会社で行っている他のビジネスにも大きな影響を与えることになります。

つまり、法律や政令や商習慣などで、ビジネスに大きな致命傷を与えるものについては、スタッフ部門は遠慮することなく声を大にしてライン部門に警告を発する必要があります。そして、ライン部門が従わない場合は、経営者におかれている状況を正しく説明して経営判断を仰がねばなりません。スタッフ部門が守るべきことは、まさにここにあります。

ビジネスを成功させている経営者やライン部門は、色々なことに自信を持っていて会議などでの発言力が大きいと思います。でも、あなたがスタッフ部門で研鑽を重ねているのであれば、経営者やライン部門よりも専門分野では見識が高いはずです。ですから、ビジネスに致命傷を与えるものについては、臆することなく進言していきましょう。