商社なら営業、メーカーなら技術者、ネット企業なら開発者が、会社の業務に直接かかわるライン部門/直接部門であり、それに対して、企画部門、人事部門、法務部門、経理部門などはライン部門/直接部門をサポートするスタッフ部門/間接部門です。
昨今のビジネス環境は、ネットの普及によって誰もが瞬時に多くの情報を得ることができるため、各企業は多くのステークホルダーに対して良好なCSRを維持する必要があります。そのため、ライン部門だけでは対応できないことも多くあり、スタッフ部門を一定数確保して様々な管理や専門業務を行わせることで効率的に、業務の全体最適を計ることが多くなっています。
ところが、スタッフ部門がある程度大きくなってくると、企業においては本業のビジネスとは離れた方向に行きやすくなるため注意が必要です。
ライン部門は、お客様や様々なビジネス環境に直面しながら、様々な課題に対応していきます。すべての課題について100点満点をとることは実質は困難であり、限られたリソースと限られた時間の中でビジネスを成功させるために必要な項目を解決していきます。ある課題については90点を狙い、別の課題はなんとか60点でしのぐのです。もちろん、課題についての優先順位は時間とともに変化していきます。先週重要だったテーマは、来週になれば必要なテーマではなくなっている可能性があります。ビジネスは生きているのです。
一方、スタッフ部門担当するのは、ある限られた専門領域でのサポートです。その専門領域については熟知しており、何をどのようにすればその専門領域がベストになるかというのはよく分かっています。優秀なスタッフであれば、その専門領域の課題を解決するためのサポートのしくみを作り上げて実践することもできます。例えば、最近注目されている環境問題であれば、環境部門のスタッフは、環境に関する解説書を作成し、講習会を社内で行い、必要な業務をするためのシステムを構築して、マニュアルを整備し、ライン部門に環境の取り組みを実践するように推進します。場合によっては、懲罰規定までを作成するでしょう。
もちろん、これはそのスタッフ部門担当としては正しいのですが、それが、ビジネスにとってどれくらい重要で全体の工数の中でどれくらいの比率で取り組むべきことであるかは、経営者やライン部門でないと判断が出来ません。しかしながら、スタッフ部門がある程度大きくなってくると、社内におけるパワーが強くなってくるので、予算やシステムやルール化を強制的に行うことが可能になってしまうのです。
こうなるとライン部門は、例えば先の環境業務に大きな負荷がかかることになります。もちろん、環境問題はとても大切なことなのですが、その企業の社会的責任を大きく超えたりやビジネスを不可能にするまでの過剰な対応をするというのは、経営トップの要請が無い限りはするべきではありません。
企業のスタッフ部門に求められることは、担当専門領域を極めることだけでは不十分であり、いまライン部門が置かれている状況を正しく理解し、会社としてどこまでその専門領域で必要なことを行うかの判断をすることが大切です。よく、スタッフ部門の人で、「私はライン部門の業務がわからないので」という方がいらっしゃいますが、それはあってはならないことです。企業においては、ライン部門の業務と状況を理解して初めて意味があるスタッフ部門なのです。